天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
僕は何も言えない。

(なんて強さだろ…なんて強さだろ)

人はなんて、強いんだろう。



「あ、あたし…もう一つ…知って…います」

ついに、ジェシカの言葉が途切れ途切れになる。

僕は本当に、何も言えない。言うことなんてできない。

「真のバンパイアは…吸った人間の思いを心に残すことができる…。その中で生きることが、できる…」

「ジェシカ…さん」

「人間の…あたしの…思い……を…」

ジェシカの手が、僕の涙に濡れながら…落ちていく。

「人に…未来を……生きる…未来を…」



これが、ジェシカの最後の言葉だった。

ジェシカの命が終わる刹那、僕はジェシカの首筋に噛み付き、全身の血を吸い取った。

熱く熱く…沸騰しているような血を吸った。





「うわあああああ!」

僕の腕の中で血を吸ったのに…少し重くなり、命の火が消えたジェシカをただ、抱き締めた。



生命の息吹きが消え去った大陸に、僕だけが叫び続けた。

なぜなら、今はそれしかできないから。



「僕は勇者でもない!真のバンパイアでもない!」

泣き叫ぶ僕に、アルテミアは何も言わなかった。

なぜなら、彼女もまた…泣いていたからだ。

例え…ピアスの中で、涙を流せなくても。





太陽のバンパイア。

第一部完。

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