天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「くそ!」

マリーは、蝙の羽を広げると、空中に飛び上がった。

すると、手に持っていた剣が折れた。

「クッ!」

マリーは剣を投げ捨てると、どこかへ飛び去った。

その様子を見届けたラルも、煙のように消えた。




「ティアナ様」

カイオウは、お母様の前で跪いた。そして、顔を上げ、

「無理をなさらぬように…あなたのお体は…」

「知っていたのか」

お母様は、ライトニングソードを一振りした。その剣圧で、風を切る音が、カイオウの言葉を止めた。

「だが…」

お母様の手から、ライトニングソードは消え…2つの物体に変わる。

「それも、運命の予定…」

お母様は、その2つの筒ようなものを握り締めた。

「悪い予感が致します。次回の会合…。今日は、あなたをお止めに」

「カイオウ…ありがとう」

お母様はカイオウに微笑みかけると、立ちすくんでいたあたしに、その2つ物体を差し出した。


「この武器は…チェンジ・ザ・ハート。今日からは、あなたが使いなさい」


あたしは嬉しいが、驚き、

「こ、これは…お母様の…」

あたしの言葉を、お母様は遮るように、微笑んだ

「チェンジ・ザ・ハートは、あたしが作りましたが…素になった武器があります。その武器を、あたしは使えなかった…」

ティアナは一度、言葉を切り、

「チェンジ・ザ・ハートは、使った者の記憶を刻むことができます。これを使いこなせるようになれば、あなたも、モード・チェンジが使えるようになるでしょう」


「これで…」

あたしは、受け取ったチェンジ・ザ・ハートを見つめた。

その時、あたしはチェンジ・ザ・ハートを貰った嬉しさで、

肝心なことに気付かなかった。

お母様の優しげな瞳に、やどる影に…。


その日、安定者の1人でもあるお母様は、その会合へと旅立った。

自らの武器であるチェンジ・ザ・ハートを、あたしに譲って。

そして、あたしは生きたお母様に、二度と会うことはなかった。
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