天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「…」

未だに、世界を守る巨大な結界。

それは、世界を二分するほどに広い。

実世界でいう…ロシア、中国、東ヨーロッパが魔界と言われる魔王のテリトリーだった。


結界は、エベレストやアルプスなどの山脈を利用して、広大な距離を覆っていた。

いつからか…誰が張ったのかは、わからない。

ただ…一部剥き出しになった遺跡が、結界を張っていることはわかっていた。

遺跡の数はわからない。

地下や、空中にあり、

その姿を晒しているものは、少ない。



その内の1つを、女が見上げていた。


剥き出しになった外壁に、女は手を触れていた。


「この技術があれば…王国は滅びることは、なかった」

この世界で、この遺跡でしか使われていない鉱石は、貴重であり、

一部を切り取り…採取しょうとした学者がいたが、

魔法を受け付けない特殊を材質の為、傷1つつけることができなかった。

女は目を瞑り…死んでいった者に哀悼の黙祷を捧げた。

女の名は、カルマ。

数ヶ月前に滅んだアステカ王国最後の生き残りである。

アステカ王国が、魔王に襲撃させた際、

カルマだけが脱出させられたのだ。

その時、気を失っていた為に、カルマはなぜ助かったのかは…知らない。



たった1人生き残ったカルマは、ここ数ヶ月…ただ悔いてきた。

アステカ王国の守護神として生まれ…特別に強力な力を与えられていたカルマは、

結局、王国を守ることはできなかった。

肝心な時に、気を失った。

「クッ」

カルマは、遺跡の壁を叩いた。

本当ならば、喉をかき切って、死ぬべきなのだろうが…

カルマは戸惑っていた。


普通の人間にはない超能力を使えるが、寿命が短い…アステカ人。

その種を守ることが、カルマの使命だった。

今、カルマが命を絶てば…アステカ王国の血は絶える。



それは、絶対にしてはいけなかった。
< 1,403 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop