天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「無駄ですよ」

「あなたには…」

「助けられない」

3人が微笑みながら、呟くように言った。

「なぜなら」「なぜなら」「なぜなら」

3人は、僕の目を見た。

その瞬間、僕の体は凍りついたように動かなくなった。

「この世界では…」

「あなたは…」

「魔法を使えない」

3人は、動かなくなった僕にゆっくりと近づき、
ブラウスの胸元をはだけさせると、蛇のように僕に絡みついた。

僕の正面から、首に手を回した一番胸の大きい泰子が、胸を押し付けながら、僕の耳元で囁いた。

「我は、水の女神マリー様の命により、時空間をこえて…この世界に来た」

「天空の女神の依り代である…」

ショートカットの井田が後ろから、僕を羽交い締めにする。

「お前を殺す為に…」

足元に、秋本が絡みつく。

「時空間をこえただと…」


必死に抵抗するが、まったく動かない。

女の力ではない。

それに、水に濡れた靴が接着剤を踏んだみたいに、まったく動かない。

「無駄だ」

部室の一番前…本来なら教壇があるところから、ゼリー状の塊が滲み出てきて、

やがて、

人の形になる。

「先生?」

目を丸くする僕の前で、ゼリーが色を持ち、形を成していく
< 186 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop