天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
あれから、数日がたった。

学校は、元通りになり、生徒達は、何事もなかったように、日常に戻っていた。

海童のことは、全生徒の記憶から消えており、
破壊した演劇部の部室も、元に戻っていた。


僕は昼休み、廊下を歩いていた。

コンクリートのいつもの固い感触を、靴から感じながら、少し安心していた。




「こうちゃん!」

後ろから、呼び止められた。

声の主は、わかっていた。

足を止め、振り返ると…はにかんだ笑顔の明菜がいた。

「あのね…ちょっと話があるんだけど…」

「明菜」

僕は微笑んだ。

明菜の用件は、わかっていた。


「ごめん」

僕は、頭を下げた。

「僕は、やることがあるんだ」

顔を上げた僕は、明菜の目を直視した。

僕の目を見て、

明菜は、言おうとした言葉を飲み込んだ。

一度、視線を僕から外すと、後ろに手を回し、僕に見えないように、ぎゅっと握り締めた。

「そうだね…」

明菜は視線を戻し、

これ以上ないくらいに微笑んだ。

「こうちゃんには…やることがあるんだよね」

「うん…ごめん」

僕は頷いた。





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