天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「駄目だ!アルテミア!」

もう止める方法は、一つしかない。

「モード・チェン」

アルテミアと変わろうとして、叫んだ僕の言葉を言い終わらない内に、

「う」

アルテミアは、体を九の字に曲げ、脇に挟んでいたチェンジ・ザ・ハートを落とした。

地面に転がるチェンジ・ザ・ハート。

ジュリアンの膝蹴りが、アルテミアの腹に叩き込まれていた。

そのまま、前に崩れ落ちるアルテミア。

「モード・チェンジ!」

僕は、もう一度叫んだ。

倒れているところで、アルテミアと変わった僕の視線の隅に、ジュリアンの顔が一瞬映った。

ほんの一瞬だったけど、ジュリアンの瞳を覗くことができた。

変わったばかりの僕に、膝蹴りの衝撃が伝わってきた。痛さに、顔をしかめながらも、僕ははっきりと、ジュリアンの瞳の奥を確認できた。

(泣いている…)

相変わらず目は血走り、狂ったように、殺す殺すと呟いているが…。

(違う…この人は…)



「くそ」

僕は痛みをこらえて、倒れる瞬間、両手を地面につけた。

そして、必死に顔を上げ、そのまま立ち上がろうとした。

正面に、車椅子の少年がいた。

少年は首を傾げ、事態を理解していないようだ。


「いたぞ!」


少年の後ろの扉が開き、病院内から、警備隊が飛び出してきた。
< 293 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop