天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
少年は、火の玉に向けて、手をかざすと、呟いた。

「くだらない」



「き、君!」

ダラスは、少年に声をかけた。

いきなり、カードが警告音を発した。

「え」

ダラスが、カードに気をとられた一瞬、

少年は、火の玉に向かって、ジャンプした。

信じられない跳躍力で、十階建てのビルを越えると、火の玉に触れた。

唖然とするダラスの目の前で、直径五メートルはあった火の玉が、消えた。

まるで、少年の手に吸い込まれたかのように。

少年はそのまま、火の玉に触れると、落下していく。

黒竜が鳴き叫び、再び火の玉を放とうとしたが、下から三本の爪が伸びてきて、黒竜の突き出た口を、顎から突き刺さった。

黒竜は、火の玉を放てなくなった。

落下していた少年は、空中で止まっていた。少年の右手から伸びた爪が、黒竜を突き刺さしていたのだ。

その爪を手繰り寄せ、少年は黒竜に向けて、上がっていく。

「きぇぇ」

奇声を発し、黒竜は角を輝かせた。

少年と黒竜の間に、バリアができたが、少年は左手の爪でバリアを砕く。

さらに、角が輝き――どこからか、人面鳥の群れが現れた。

「まだこんなにいたのか」

空を覆う人面鳥の数は、数百匹。

少年に向かって、襲い掛かる。

「フン」

少年は鼻を鳴らすと、左手を突き出した。

「バーニングダスト」

何もない空が、爆発した。火を放ったわけでもない。まるで、空気そのものが、自ら爆発したかのように。

黒竜の火の玉の数倍の輝きを発すると、

光が消えた後、人面鳥は一匹残らず、消滅していた。

その輝きの間に、少年は黒竜の目の前まで、ジャンプしていた。

少年の体程ある黒竜の赤い目と、少年の目が合う。

ダラスは、黒竜の変化に気付いた。巨大な目を見開くと…やがて、その巨体を震わしたのだ。

「怯えている…」

ダラスには、そう見えた。いや、事実…怯えていたのだ。

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