天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
わだかまり
衛星軌道上にある基地に戻った西園寺は、分厚い窓にもたれ、憂いの表情を窓に映していた。

この宇宙基地は、西園寺の案で設計され…建設された。

宇宙という概念が、不足していたこの世界において、西園寺の考えは、画期的であった…が…。

「つまらん…」

初めて上がった宇宙から、地球を見下ろした時は、この世界を支配したかのような高揚感に包まれたが…

今は、虚しいだけだった。

自分の真の意味での無力さを、知った今では。


「魔獣因子…」

(それは何だ?)

神流の切断された腕が、再生したこと…。初めてこの世界に来た時、神流の見せた変化。

それは、神流だけのものとは思えなかった。

自分の中にも、確実に蠢くものを感じていた。

(これが…クラークの求めたものなのか…)

悩んでいると、唐突にドアが開いた。

西園寺達…安定者は、個人個人に部屋を与えられていた。

机と椅子…ベットしかない部屋に、松永が入っていた。

「いたのか…。すまん、ノックする前に、ドアが勝手に開いたもので…」

松永は頭をかきながら、部屋に入ってくると、

「相変わらず、殺風景な部屋だな。佐々木達と正反対だな。あいつは、カード使って、ありとあらゆるものを取り寄せてるぜ」

松永の話にも、無表情な西園寺に、肩をすくめ、

松永は、入り口のそばで止まると、距離を取って、西園寺を見つめた。

「ったく…何を悩んでるのか…。お前と、守口だけだぜ。こっちに来てから、レベルが上がってないのは」


その通りだった…。神流と正志、松永のレベルは80をこえていた。特に、神流は85と5人の中で、最高レベルにある。

舞子と、西園寺は来た当時とほとんど変わらず…レベルは66で止まっていた。

「俺達は、安定者なんだから、最低80はないと」

松永の言葉はもっともだが、

西園寺は、無意味に魔物と戦い、殺すのことに、あまり気が進まなかった。

舞子の理由は、知らない。

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