天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
魔獣因子
「貴様ら!何者だ?」

松永は、手に持った剣を構えながら、キャンピングカーの周りを囲む魔物達を睨んだ。
鶏のような顔をした魔物達は、笑いながら、松永との間合いをじりじりと詰めていく。

「名乗る気はないか…」

松永の握る剣が、日本刀に変わった。刃を魔物達に向けた。

今まで松永が倒してきた魔物と、雰囲気が違っていた。

ただ狩っていた魔物は、動物という感じがしたが…目の前にいる魔物達には、知性を感じた。

立っているだけで、人のようなプレッシャーを感じられた。

「ケケケッ」

魔物の馬鹿にしたような笑いに、内心、頭にきながらも、松永は平常を装った。

刀身が、妖しく光った。

「馬鹿目」

同じことを一斉に口にすると、魔物達は一歩、松永に近づいた。

その瞬間、松永は口元に緩めた。

「馬鹿は…てめえらさ」



「グギャー!」

魔物達は、断末魔の叫びをあげた。

キャンピングカーを囲む魔物達をさらに、囲むように、鋭い刃物が回り…魔物達を後ろから、切り刻んでいた。

「後ろから?」

魔物が振り返ろうとした時、その喉元を切り裂いた。

「卑怯な」

血まみれになりながら、崩れ落ちる魔物達に、松永は鼻で笑った。

「お前らが、前しか注意しないからさ」

剣の勝負は、いかに相手を誘い、速く、相手の隙をつくか…見えない死角からの攻撃が、一番有効である。

人の一番の死角は、後ろである。

常々、松永は思っていた。簡単に死角から、攻撃できないか。

しかし、普通…敵と対峙した場合、後ろをとるのは、容易ではない。

それを、この世界は可能にしたのだ。

松永は、剣を下ろした。

相手に見せる剣は、囮。最初から、後ろから切る気でいた。


「お見事!」

いきなり、拍手が聞こえ、松永は前を見た。

湿気の多いこの土地で、黒いハーフコートを着込んだ男が立っていた。

「すばらしい!それに、比べて…こいつは、卑怯だと!」

男は、一番近くで倒れている鶏顔の魔物を、踏みつけた。

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