天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「そ、そんな…。そんなことはない!」

折れそうになった心をもう一度、奮い立たせ、松永はもう一本の腕も、突き出した。

水圧は増したが…不動はびくともしない。

水蒸気が、松永の全身を包み、汗がふき出し、彼のやる気を削いでいく。

水圧が、減った時…

キャンピングカーのドアが、開いた。

そこから、飛び出してきたものは…。

「正志!」

火だるまになった正志だった。

来ていたジャンバーが燃え上がり、さらしていた下半身のものが、一番燃えていた。

その姿を見た瞬間、松永の放水は止まった。

キャンピングカーのドアの横に、もたれながら…ずり落ちていく。

完全に、尻餅をつくと同時に、キャンピングカーの中から、先程入った女が、ゆっくりと出てきた。一糸も纏わずに。

「まったく…入れてすぐいくなんて…最近の男は、駄目ね」

火だるまになり、地面をのた打ち回る正志に、女はため息をついた。

「な、なんだ…」

状況がつかめず、軽いパニックになった松永に、女は気付いた。

怯えている松永に、女は一瞥をくれると、

不動を睨んだ。

「どうして、あんたがいるのよ?ここは、あたしに任せれたはず」

女の全身から発する殺気に、不動は肩をすくめた。

「今の安定者の実力を、知りたくてね」 

「邪魔するな!」

女は、不動の前に立った。

不動は、肩をすくめたまま…その場から消え去った。


「不動め!」

指の爪を噛み、苛立ちを露にしながら、女は不動がいた空間を睨んでいた。

「い、一体…何が…」

松永は、腰が抜けたのか…立ち上がれない。

ブラックカードを出し、回復系の魔法を発動しょうとしたが、カードが地面に落ちた。

女は、松永の方を向けた。

クスッと笑うと、腕を組んだまま、ゆっくりと松永に近づいていく。



「ぎゃああああ!こ、こ、殺してやるるううう!」

絶叫が、周りの空気を震わした。

殺気が、松永まで伝わり…肌に突き刺さった。

松永は、女の後ろで立ち上がる…火だるまの正志の姿を確認した。
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