天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
もしこの時、西園寺がブラックカードのディスプレイを見ていたら、気付いただろう。

2つのレッドマークが、重なったことを。


先程とは少なくなったが、泉の水が戻ってきた。

「アルテミア!」

周りを見回すポセイドンの体は、水でびしょ濡れになっていた。

それを拭うことなく、ポセイドンは辺りを伺う。


「逃げたか…」

ポセイドンが、そう呟いた時…その身に、異変が起こった。

「ぐぐ…ぐげっ!」

突然、体を捩らせ、何か喉に詰まったように、吐き出そうとした。

「ぐぇ!」

何度かの嗚咽の中、喉から出てきたのは、鋭い爪を生やした…か細い腕だった。

ポセイドンの30センチはある大きな口から、もう一本腕が出てきた時、

それらは、力任せに、中から口を引き裂いた。

そして、ポセイドンの全身の穴から、電気が走った。


「うが………!」

声にならない声を上げた後、ポセイドンの体は爆発したかのように、飛び散った。


その中から、現れたのは、アルテミアだった。


「何が起こったんだ?」

西園寺には、理解できなかった。


アルテミアは、水の女神マリーの能力である液体変化を使い、先程落ちてきた水と混ざり、

ポセイドンの内部に侵入したのだ。

「水の女神の技で、死ねたんだ…本望だろう」

いつのまにか、アルテミアはポセイドンの心臓を掴んでいた。

それを、生で食らう。

「お前の力も貰うぞ」


心臓にかぶり付くアルテミアを見て、西園寺はぞっとなった。

(今度は、俺が…)


しかし、アルテミアは西園寺に、構うことはできなくなった。


「な…」

アルテミアの手から、ポセイドンの心臓がこぼれ落ちた。

腕が震えていた。

「何だ…このプレッシャーは…」

唖然としながら、振り返ったアルテミアの後ろに、

能面をつけた女が、立っていた。

女の登場とともに、空は一面の星空へと変わった。
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