天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
面影と忘れ物
カッカッカッ…。

小気味よく、先が見えない程の長さの石廊を、レイラは歩いていた。

彼女が歩く度に響くリズムは、少しの苛立ちを表していた。

なぜ苛ついてるのかは、自分でも分からなかった。

左右の壁は、窓もなく、まったく同じ風景が続き、どこまでを歩いているのか…認識しにくいが、前だけ見てるレイラには、関係なかった。

それに、なぜかこの廊下を知ってるような気がしていた。

何度も歩いていたような。

しかし、そんなことは気にしていなかった。

自分は今…生きていない。

それだけは、確信していた。

だけど、何か目的があって、今は生きているみたいだ。

それは、この世界に住む…悲しき魔物を救う為。


初めて、透明の筒の中で目覚めた時、跪く魔物達が見えた。

それは、恐れや尊敬ではなく…救いを求めて…。

「我ら闇の者は、光を求めていない訳では、ございません」

跪く魔物の1人…カイオウは言った。

「ただ…光に手が届かないだけでございます」


城の外に広がる…一面の向日葵は、魔界といわれる闇の領域とかけ離れていた。

「この星に生まれし者が、この世界を美しいと思うことは、当然」

向日葵の中で佇むレイラに、バイラは言った。

「我らに光を!」

「与え下さいませ!光の女神よ」

涙を流し、ただ跪く魔物達に、レイラは誓った。

「わかりました…」

どこまでも続く向日葵を眺めていると、なぜか…レイラは切なくなった。

「この地は…美しいのに…悲しい…」

風が、吹いた。

レイラの長いブロンドの髪が、激しく靡く。

風の向こうに、飛んでいく白い帽子が映った。

それを…追い掛ける…少女が………………………。




レイラは、真っ直ぐ続く石廊をいきなり、右に曲がった。

すると、レイラは階段の上にいた。

唐突に足下の感覚が変わったが、戸惑うことなく、レイラは、上がっていく。


ふっと数段上がった所で、レイラは顔を上げた。


「ティアナ…」

呟くような小さな声を発し、階段の上に…魔王ライはいた。
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