天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
この世界では…人は……滅びゆく種族だ。


生きる為、魔力を手に入れ…権利を手に入れ…

強大になった者は、その力で、

他人を支配したり、ただ力に溺れるだけで、


誰かを守る為に使う者は、少ない。

他人を守る…。

だけど、それに奉仕の心はあってはならない。

無償であるが、それを自慢してはいけない。


自分では気付かず、

ただその行動する思いが、

他人には伝わっても、自分ではそれを、特別なこととは、思わない。

守りたいことが、守る為に努力することが、自分にとって、当たり前のこと。



(赤星浩一…お前は…)


クラークはいつのまにか…動きを止め、ただ僕の剣撃を受け続けていた。

無我夢中だった。

気付いた時、クラークの心臓を突き刺したライトニングソードを、僕は握っていた。

クラークは、ゆっくりと崩れ落ち、その場で前のめりで、地面に倒れた。


嗚咽感を抑えながら、僕はクラークを追い越し、地面に突き刺さっている次元刀に向かう。

柄を掴み、ゆっくりと地面から引っ込抜く。

すると、全身にどっと疲れを感じた。激しく肩で息をし、何とか踏張りながら、僕は振り返った。

「どうして…この刀で最後まで戦わなかった!それに……あんたは、明らかに…本気じゃなかった…」

僕の言葉に、クラークはクククと笑い出した。

俯せに倒れている為、クラークの表情はわからない。

「赤星浩一………お前は、そのままでいい」

「?」

僕には、クラークの言葉の意味がわからない。

「早く行け!明菜を…もとに戻してやれ…」


クラークに近づこうとする僕に、クラークは横顔を向けた。

「倒した相手に、情けをかけるな!それが、この世界のルールだ!」

僕を睨むクラークの…あまりの形相に、僕は足を止め、

ゆっくりと背を向けた。


「ライトニングソードで…空間を少し切り裂いたら…彼女は、帰れるさ…」

僕はゆっくりと頷き、倒れているティフィンを背負うと、二本の剣を持ちながら、その場から離れた。


もうクラークの方を、振り向くことはなかった。
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