天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「終わったか…」

無様な死に方だが…仕方がない。

クラークの血の匂いに誘われて、怪鳥や魔物が集まってくる。

意識が遠ざかりながら、自分が食われることを、覚悟した。

それが、自然なのだ。


ゆっくりと、目を閉じた刹那、

魔物達の断末魔が響いた。

凄まじい突風が吹き、魔物達を切り刻み…、クラークの目の前に転がった肉片が、すぐに腐って、消えた。

「これは…」

うっすらと目を開けたクラークに、駆け寄ってくる女の足が、映った。

「クラーク!」

倒れていたクラークを、抱き上げた女に、クラークは笑いかけた。

「やあ…舞子。よく僕がわかったね…」

魔獣へと変化したクラークに、人の面影はない。

「どんなに姿が変わっても…あなたが、わからないはずがないわ!」

クラークは嬉しそうに笑うと、血だらけの手でそっと、舞子の頬に触れた。

「最後に、君に会えて嬉しいけど……こんな所に来てはいけない…早く戻り給え…」

「傷を治さないといけない」

舞子がブラックカードをかざしても、治癒魔法は発動しない。

「無駄だ…。ここでは、カードは使えない…。それに…私はもう…人としては死んでいる…魔獣因子の力で、まだ意識があるだけだ…」

舞子は、クラークの胸に開いた穴に気付き、涙を流した。

「一体誰に…」

「早く帰り給え…。魔法が使えない土地で…君1人では危険だ…」

舞子は、クラークの傷口に触れ…呟いた。


「赤星浩一ね…あなたをこんな目にあわせたのは…」

その怒りの口調に、クラークは最後の力を振り絞って、首を横に振った。

「彼ではない…彼ではないよ…。早く帰れ…舞子…。早く…舞子……………」



それが、クラークの最後の言葉だった。

「クラーク!」

舞子の腕の中で、こと切れた瞬間、クラークの体は硬化し…すぐに砂のように崩れた。

驚く舞子の目の前で、砂になったクラークの額についていたブラックカードだけが、そのままの形で残っていた。


舞子は、茫然自失となり、ただブラックカードを見つめ、手の平に残った砂が、落ちていくのをただ…見つめていた。
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