天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「だから…無理だったんだよ」

水面から這い出した僕の頭の上に、ティフィンが止まった。

「何言ってる!水中戦ができない勇者がいるか!」

「僕がやってきたRPGには、水中戦をやる勇者なんかいなかったよ!」

慌てて立ち上がり、猛ダッシュする僕の後ろに広がる湖が、盛り上がり…無数の触角が、襲いかかってくる。

「10分くらい息をとめろ!」

ティフィンが、僕と平行して飛びながら、毒づいた。

「お前は、水に入らなかっただろ!」

後ろから、飛んでくる触角を避ける僕に、

「水中にいる妖精を、見たことあるか!」

と言うと、僕を囮にして、ティフィンは安全圏内に逃げていく。

「ティフィン!」

「心配するな!手足が取れないくらいの怪我なら、治してやるからな」

手を振りながら、上空に消えていくティフィン。




「畜生!」

覚悟を決めて、僕は濡れた髪を靡かせながら、触角達と対峙する。

2,30本の鋭い針のような触角が、僕に向かってくる。

「チェンジ・ザ・ハート!」

僕の叫びに呼応して、2つの物体が飛んでくる。

触角よりも速く、僕の手に装着されると、トンファータイプから、槍へと変わる。

「うおおおっ!」

槍を回転させ、盾のようにして、触角を受けとめる。

攻撃を弾いたけど、衝撃で僕は、地面を抉りながら、後ろに下がる。

「前へ!」

足の指に力を込めて、前に出る瞬間、槍は巨大な砲台に変わる。

バスターモード。

「そこ!」

再び触角が襲いかかってくる前に、盛り上がり滝のようになってくる水面に向かって、引き金を引いた。

光のドリルが、水面を貫く。

「チィ」

僕は舌打ちをした。

明らかに、威力が落ちている。魔力が、ないからだろう。一撃で仕留められない。

「だったら…直接!」

バスターモードから、二本の棒に戻ったチェンジ・ザ・ハートをクロスし…ライトニングソードに変える。

そのまま、袈裟切りの構えで、僕は突進していく。

触角を切り倒し、雷鳴を轟かせ、湖に向かってジャンプする。

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