天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「私は…あのような者を、仲間と認めたくはありません」

数十階のビルから、軽く飛び降りた三人。

あまりの早さと、一瞬の出来事の為、人が見ていたとしても、目の前に起こったことを信じなかっただろう。

幸いにも、ビルの裏側だった為、人目につくことはなかった。

普通に歩きだす山根の背に向けて、千秋は言葉を投げ掛けた。

山根は、足を止めない。

「私達は、人から進化した…新たなるピラミッドの頂点に立つ者です。それなのに…彼の行為は…」

言葉を止めない千秋に、山根は前を向いたまま、言葉を発した。

「彼の行為は…別に、おかしくないだろ?我々は、もう人間ではないのだから」

「し、しかし…人を…食べるというのは…」

思わず顔を背ける千秋に、

山根は軽くため息をつくと、

「我々は、人の上に立つ…。下の階層の生物から搾取するのは、当然だ」

「わ、私達は…もとは…」

まだ反論しょうとする千秋に、山根は笑った。

「同士の中には、食べる者は多い。それに…」

山根は、軽く振り返ると、口調が変わった。

「君は…人を殺すことは、いいのかい?」

山根の刺すような視線に、千秋の体が、震え上がる。

思わず足が止まった千秋を、奈津美が追い越して行く。

山根さえ追い越す奈津美を、山根は目だけで追いながら、

「君は、まだまだだな」

千秋に言うと、前を向いた。

千秋は、山根の背中を見つめた。

「彼女のように…人を、恨んだり…復讐を果たす存在としか認識するでなく…」

山根は、目をつぶった。

「人ではない…者になったという自覚を持ち給え。そうすれば…君も認められるよ」

山根は、千秋に見えないように、口元を緩めた。


千秋は、唇を噛み締めた。

足を止めている千秋に、山根はもう一言、付け加えた。

「…私なら、いただく場所は、こだわるがね」


その言葉をきいてもなお…千秋は、理解できないと思っていた。



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