天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
遊戯
すべてが、終わる…。

いや、終わらせなければならないのだ。



一階の奥にある仏壇の前に立つ…赤星綾子。

四畳程の和室に、ひっそりと置かれた仏壇に飾られた…慰霊碑。その横にある写真は、綾子の祖母のものだった。

綾子に祖母の記憶はない。

兄である浩一は、思い出があるらしいが……。

綾子は無表情で、写真を見下ろしていた。



「綾子!」

台所の方から、母親の声が聞こえてきた。


綾子は、仏壇に背を向けると、ゆっくりと歩きだした。

「今度の休みなんだけど…」

台所で、料理の用意をしている母親は、忙しく腕を動かしながら、背中越しに話し掛けていた。

「志紀のおばさんから、券を貰ったから…一緒に、温泉でもいかない?」


「温泉?」

台所に入ってきた綾子は、テーブルに並べられた食器類を見つめた。


「どうかしら?」


「そうね………」

綾子は、母親の背中を見つめた。


綾子の目が赤く光る。

「折角だから…行きましょうよ」

久しぶりに母親の声が、明るい。

「………」

綾子の目が、母親をスキャンする。

(やはり…人間…)


綾子の母親は、人間だった……。進化する種もない。

「行きましょうよ。予定ないんでしょ」


「そうね……」

綾子の右手が、赤く光った。

視線が冷たく…母親の背中を射ぬく。


(こいつは……ただの人間。いずれ、滅ぶ人間……。だとしたら……せめて、あたしの手で…)

綾子の右手が炎に包まれ…剣のような形になる。

綾子は、右手を振り上げた。






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