ノラ猫
10章 一緒に……
 
このまま、ずっと眠ってしまおうと思った。


たとえお腹が空いても
たとえ雨が降っても……


ずっとこの場を離れない。


そしていつか、
この桜が散るのと同時に、自分の命も果ててしまえばと……。



「凛……」



ふいに呼ばれた、自分の名前。

顔を上げた先に映った人影を見て、幻かと思った。


ずっとずっと会いたかった人。
ずっとずっと触れたかった人。


だけど……



もう二度と、逢いたくなかった人……。



ダメだ……。

もう彼に期待してはいけない。

 
 
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