ノラ猫
13章 幸せ……なのに…
一瞬、なんのことなのか分からなかった。
「凛。
神楽坂の名字、捨てよっか」
「え……?」
「横川凛になれよ」
それが意味する理由を理解するのには、
今までのあたしに無縁すぎて、すぐに頭の中に入ってこなかったんだ。
「と、もき……それって……」
トクトクと心臓が高鳴って
その言葉の意味を理解していく。
自惚れなんかじゃなければ
養子とか、そういったことじゃなくて……。
「結婚して、俺の籍に入るってこと」
「っ……」
さらりと言ってのける、結婚という二文字。
う、そ……。
結婚?
あたしが……?
「でも……あたしまだ18……」
「もう可能年齢だから」
「そうだけどっ……」
さすがのあたしでも、この言葉にはパニックになる。
現実味が湧かない。
だって……
つい最近までノラ猫人生だったあたしが、だよ……?