ノラ猫
 
智紀が倒れた原因……。
自惚れなんかじゃないけれど……ずっと元気だった智紀が、このタイミングで倒れるとすれば……。


「凛のせいだろ。
 見つけられもしない凛を必死になって探し回って、過労で倒れたんだって」

「……」


ああ、やっぱりあたしのせいだったんだ……。


「バカだよね、あの男も。
 もう凛は家に帰ったって、伝えたって言うのに」

「そう、なの?」

「そりゃね。急にいなくなったら心配しちゃうでしょ?
 俺って優しいから、ちゃんと凛は家に帰ったって教えてあげたの。

 なんか納得してなかったけど」


自分の知らないところで、にいさんは智紀に接触していた。

この先も、あたしはずっとこの家に閉じ込められたままで……智紀は知らずにあたしを探し回って……。


「あまりしつこいと、また警告しないとな」


その言葉が冷酷な声色で、危険を察知した。


「何する気?」
「何しよっか。痛い目見せたほうがいい?」
「やめてっ」


思わず声を荒げた。

この男は冗談なんかで言っているんじゃないと分かっているから……。
下手に逆らえば、本当に命の危険性もあるんじゃないかと……。


「へー。いまだにそんな感情的な声出すんだ」
「……」


にいさんは、あたしの反応に感嘆の声を漏らしていた。
 
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