重なり合う、ふたつの傷


───数日後、私はコンビニのバイトを辞めた。

そして、零士のマンションへ行き、ポストに手紙を入れてきた。


『桜井零士さま

こんにちは。

私、コンビニのバイト辞めました。一分でも一秒でも長く天野くんと一緒にいたいから。

素直になれたのは零士の言葉のおかげです。ありがとう。


ステージの上にいる零士も素敵だけど、普通に暮らしている零士も素敵だったよ。

ライブを終えて家に帰って、もしまた虚無感に襲われたら、ミントのガムをひとつ食べてみて。

そうしたらきっとリフレッシュできると思う。

私はこれからもずっとラズベリースターのファンでいます。

       玉置梨織』




ケータイに登録してあった零士の連絡先は削除した。



ファンは連絡先など知らずに遠くからその星を眺め、応援していた方がいい。



もし、零士の記憶の片隅に私という痕跡を残して置いてくれるなら、それだけで十分。




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