重なり合う、ふたつの傷


自分の顔は鏡の前でしか見えない。

それと同じで、自分の事ってなにもかもわかっているようで、なにもかもわかっていないのかもしれない。

そんな事を考えているうちに、天野くんがコンビニの袋から、おにぎり二個とサンドイッチを出した。



「おにぎり。ツナマヨと鮭どっちがいい。」


「じゃあ、ツナマヨ」


「えーっ、俺のツナマヨが……」


天野くんが残念そうに眉をしかめたから、私は慌てて取り消した。

「鮭、鮭でいいよ」


「なーんてな。俺、ツナマヨより鮭の方が好き」


そう言って笑う天野くんの顔が少年みたいで、すごくかわいくて、胸がキュンとした。少女漫画みたいなキュン。

きっと今瞳はハートマーク。

「麦茶持ってくるから、おにぎり開けといて」


「うん」


コンビニのおにぎり、久しぶりだな。




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