重なり合う、ふたつの傷


私にとって、おにぎりは買うものではなく、自分でご飯を炊いて作るものだったから。



えーっと、1を手前に引いて、2を引っ張る。

『バリッ』


「うっわ!」

「なんだよ、どうした」


麦茶の入ったグラスをテーブルの上に置いた天野くんが私の手元を覗き込んだ。


「破けてる、海苔が破けてる! しかも俺の鮭……」


「ごめーん。コンビニのおにぎり、すっごく久しぶりなんだ。いつも自分で作ってるから」


「へえ。なら、明日から作ってもらおうかな。具は鮭とツナマヨな」


「うん。わかった」


あっさり返事をしちゃったけど、明日から作ってもらおうかな。明日からって……。


『明日から』って事だよね。


明日も明後日もここにいていいって事?


「明後日も鮭とツナマヨでいいの?」



確認するように天野くんの顔を見上げて聞いた。



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