重なり合う、ふたつの傷


「ああ、いいよ」


「よくない、よくない」


私は顔をぶるぶるさせて言った。


「あっそ。別に嫌ならいいけど」


「ううん、ううん。違うの」

私は顔を更にぶるぶるさせた。


「明後日はカレーとかシチューとか肉じゃがとか、そういうのがいいかな、と思って」


「じゃあ、そっち系でお願いします」


「はい。そっち系で作らせていただきます」


気持ちが晴れ渡っていた。そこに幸せという虹が浮かんでいる。


そう、私、今、幸せなんだ。

幸せだったけど、ツナマヨの海苔も破いてしまった。


学習能力がないのか、私は……。


ちょっと落ち込んだ。


でも、天野くんがそれを見て笑ってくれたから、私も笑えた。



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