重なり合う、ふたつの傷
その頃のお母さんはお父さんに対しても無表情で。そんなお母さんをお父さんは物凄く心配していた。
お父さんはお母さんの事が好きなんだ。二人は大学生の時に知り合ったらしい。
お母さんは美人なのに飾り気がなく、頭が良くて気が利いて。
その分、小さな事でも気にしてしまうタイプ。
お父さんはお母さんのそんな繊細な部分も好きだと言っていた。
私はお母さんが間違って自殺でもしてしまわないように死んだ金魚のままでいた。
生き返るのは母の日だけ。
毎年贈っていたカーネーション。
諦めてはいたもののどこかで雨の止み間を求めていたのかもしれない。
希望を見ていただけに色々な意味で犠牲を伴う義務だった。
カーネーションは赤い花びらをひらりと落とし、ただ枯れていった。バラのような棘も持たずに。
花は枯れると悲しい。
頭ごとうな垂れて。
疲れきって滅びる寸前の人間みたい。