じゃあなんでキスしたんですか?
『好きだよ』
わたしの手の中で、あの日の彼が、子どものように素直な気持ちを口にする。
『好きだよ、ミヤコ』
森崎さんが、わたしの顔を見たまま固まる。
首まで赤く染まっていく。
「すまない。無断で録って」
右手を額に当てて力なく首を振り、「それ以上は……」と語尾を濁した。
わたしはささやき続けるICレコーダーに目を戻した。
そういえば、このあとは――
ぼん、と破裂するように心臓が飛び跳ねる。
「と、録れてるんですか? 声」
森崎さんは目を伏せたままうなずいた。
あのときのわたしの恥ずかしい声や、森崎さんの甘いささやきが、全部録音されていたなんて。
なんてことだ!
「わ、悪い。すぐ消すから」と真っ赤になっている彼に、わたしはずいと身を寄せた。