じゃあなんでキスしたんですか?


森崎さんは以前と変わらない無表情を保っているのに、わたしは気を抜くと彼を目で追いかけてしまう。
 
だから、なるべく目の前の作業に没頭して、仕事以外のことは考えないようにしていた。
 
放っておいたら緩んでしまう口元を、意識してきゅっと引き締める。
 
普段使わない顔面の筋肉を酷使し、頬をひくつかせながらデスクに戻った。
森崎さんの姿が目に入ったとたん垂れそうになった目を、あわてて吊り上げる。
 
顔面が攣りそうだ。
 
毎日森崎さんの顔を見られて幸せだと思っていたけれど、もしかすると社内恋愛をするなら違う部署にいたほうが気が楽だったのかもしれない。
 
同じ部署で、かつ否応なしに視界に入ってしまう真正面の席なんて、わたしのような恋愛初心者には難易度が高すぎる。
 
そんなことを考えているうちに顔から力が抜けてしまい、あわてて頬を引き上げた。
 
と、となりから高い声に呼ばれる。

「ちょっとアンタ、顔怖すぎ」
 
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