じゃあなんでキスしたんですか?


振り返ると、大橋さんが眉間にしわを寄せていた。

「鬼瓦にしか見えない」

「おにがわらっ!?」
 
声が裏返る。
 
あわてて森崎さんを見ると、ふいと顔を逸らされた気がした。

目は合っていないけれど、こちらを見ていたことは明らかだ。

氷を張りつけたようにひんやりとしていた端正な顔が、わずかに紅潮している。

「う……」
 
あれはきっと、笑いをこらえている顔だ。
 
からだから力が抜けた。
 
何が悲しくて、大好きなひとに変な顔を見られなければならないのか。   
 

恥かしくて、涙が出そうだった。


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