じゃあなんでキスしたんですか?
「あんた、責任取ってちゃんと介抱しなさいよ!」
「え……」
「さーカラオケ行こぉ!」
「おー」と声を上げながら酔っぱらいたちが次々と立ち上がり、ふらつきながら靴を履き始める。
「え、あの」
森崎さんの背に手をかけたまま、座敷席から出て行く人たちを見上げた。
アルコールに強そうなメガネの男性も、わたしを見てすまなさそうに眉を下げる。
「わるいね小野田さん。俺こいつらの面倒見るから、課長は頼むよ」
「あの、でも」
「もうすこししたら起きると思うから、そしたらタクシーに乗せてやって」
人の気配が消えると、座の賑わいを演出していた空瓶やグラス、汚れた取り皿や料理の残骸が、またたく間に芥に変わってしまう。
森崎さんが目を覚ます気配を見せないので、乱れた座布団を直すついでに忘れ物がないかをチェックしていると、出て行く同僚たちを「ありがとうございましたぁ」と笑顔で見送っていた店員が、テーブルにもたれている課長を見つけて顔をくもらせた。
「あの、大丈夫ですか」
「あ、はい」
たぶん、という言葉を呑み込んで、店員さんと森崎課長を交互に見た。
「……すみません、タクシー呼んでもらえますか」