じゃあなんでキスしたんですか?
「森崎さん、しっかりしてください」
何が起きたのかわからず、ひたすら呼びかける。
背中を冷たいものが降りていく。
と、わたしたちに気づいた女性が声を張り上げた。
「あー森崎課長が死んでる!」
「なにぃ」
「あ、ホントだ」
突然注がれた多くの視線に戸惑っていると、甲高い声が耳をつんざいた。
「ちょっと誰よぉ! 課長に酒飲ませたやつ!」
「え……」
固まっているわたしに、首まで真っ赤に染まった大橋さんがうつろな目を向ける。
「もしかして、あんた?」
「ええと……」
「なにやってんのよぉ! 課長はめっちゃくちゃアルコール弱いんだから!」
「ええっ!?」
テーブルに突っ伏したまま動かない森崎さんを見やる。
ついさっきまで、どの酔っぱらいよりもしゃんとしていた彼は今、耳の裏まで真っ赤だ。
「わ、わたし、森崎さんはウーロンハイ飲んでるのかと思って」
「ばっかねー。課長はウーロン茶一択よ!」
いつも厳しい大橋さんの口調は、アルコールのせいかどこか間延びしてる。それでも態度は普段と変わらず、据わった目でびしりとわたしに指を突きつけた。