好きになっちゃダメなのに。
「っ!」
これから曲がろうとしていた廊下の角。
その先から聞こえてきた、凛とした女の人の声。
それは、明らかに、誰かの告白を断っているような言葉で。
私はハッとして、歩いていた足を止めた。
……ん?
ていうか、今、『遥斗』って……。
「……わかった」
「!!」
女の人の返事に答えるように悲しげな色を浮かべた男の人の声が聞こえてきて、それは、信じられないけど、まぎれもなく────。
「ごめんね、遥斗。……本当にごめん」
「いいよ、別に。……部活に戻れば。わざわざ呼び出したりして俺の方こそゴメン」
……こんなときまで、どこかそっけない声。
そんな声の後、私がいる方向とは逆に向かう、ひとり分の足音が聞こえた。
きっと、告白されていた女の人が部活に戻っていったんだろう。
……ああ、もう。
やっぱり間違いないよ。