私の師匠は沖田総司です【上】
再び視界が砂嵐にのまれ、次に映し出されたのは、死装束を身に付けた山南さんの姿でした。

近藤さんや土方さんたちが見守るなか、山南さんは小刀を手に、切腹の作法を着々と進めていく。

作法を進めていく山南さんの表情は、死が間近に迫る人とは思えない程、穏やかでした。

一方、山南さんの傍らに立つ、師匠の手は震えています。

溢れそうになる涙を必死に堪えながら、山南さんを見ている。

少しでも、山南さんの姿を目に焼き付けようとしているんだ。

師匠はずっと心の中で『いやだ……山南さん、やめてください』と叫んでいる。

今まで感じたことがない強い悲しみが、師匠を通して私の中に流れ込んでくる。

「山南さん、やめてください……」

いつの間にか私も涙を流しながら、師匠と同じ言葉を呟いていました。

『「切腹なんてしないでください。貴方には生きて欲しい。ずっと一緒にいてください……」』

それに山南さんは師匠たちの他に、心から愛した人がいるでしょう?

一人取り残される明里さんはどうなるんですか?

どうして、山南さんは、明里さんと生きる道を選ばなかったんだろう。

明里さんよりも、新選組の方が大切だったの?

ねぇ、山南さん、どうして……?
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