私の師匠は沖田総司です【上】
少し体を横にして蒼蝶の顔を覗き見る。
部屋が暗くてあまり見えないけど、頬に涙の跡がついていた。
そう言えばこいつ、泣きながら俺の名前を呼んでたな。
沈みかけていた意識の中、蒼蝶の声が聞こえて意識が戻った。
焦点が合わなくてハッキリとは見えなかったけど、こいつが泣いてるのはわかった。
心配かけちまったな……。
蒼蝶が起きたらいくらでも文句を聞いてやるか。
しばらく蒼蝶の寝顔を眺めていると、部屋の戸がひかえめに開かれる。
「目が覚めたんやな」
「千代菊」
名前を呼ぶとそいつはクスクスと笑った。
今の千代菊は太夫の着物ではなく、黒い着流しを来ている。
いつもきっちり纏められて沢山の簪が刺している髪も、鎖骨あたりの長さになっていた。
そこら辺の奴が今のこいつを見ても角屋の太夫千代菊だって分からねえだろうな。
「龍馬、今のウチは千代菊じゃあらへんよ」
「だったらその気色悪いしゃべり方やめろ」
「角屋での生活が長かったからな。この話し方が体に染み付いてしまったんよ」
千代菊が笑みを深める。