私の師匠は沖田総司です【上】
再び一人で部屋にいると、仕事終わりの蒼蝶が部屋に入って来た。
いつもは少し疲れを我慢するような顔をしてるけど、今日はどこか楽しそうな顔をしている。
「お疲れ様。裏方の仕事はどうだった?」
「いつも通りでした」
ニコニコと笑みを浮かべたままの蒼蝶は俺と向かい合うように座る。
「龍馬さん」
「ん?」
「今日は何の日でしょう」
蒼蝶の突然の問に首をひねって考えてみる。
……別に普通の日だよな。
「一体何なんだよ。勿体振らないで教えろ」
「しょうがないですね。……はい、龍馬さん。ハッピーバースデー!」
そう言って蒼蝶は後ろから綺麗に畳まれた紺色の襟巻きを俺に差し出した。
「はっぴー……ばーすでー?」
「お誕生日おめでとうございますって意味です。今日、龍馬さんが生まれた日なんですよね。岡田さんから聞いたんです」
「……ああ、そう言えば」
そうだったな。すっかり忘れてた。
「この襟巻きは私から龍馬さんに贈り物です。どうぞ」
差し出された襟巻きを受け取る。紺色のそれはすごく肌触りがよかった。
見た目は地味だけど、機能性を重視して選ぶのが蒼蝶らしいと思う。
「蒼蝶の時代ではそいつが生まれた日を祝うんだな」
「え?……あっ!そうだった!この時代にはまだ誕生日がなかったんだ!
うっかりしてた……。龍馬さんごめんなさい」
「謝る必要なんかねえよ。すげえ嬉しいから」
本当に嬉しい。嬉し過ぎて柄にもなく子供みたいに飛び上がりそうだ。