私の師匠は沖田総司です【上】

「それ貸してください」

俺から襟巻きを取ると、蒼蝶はそれを俺の首にまいた。

「怪我が治ったばかりですし、まだ寒い日が続きますから、あたたかくしてくださいね」

後ろの方で両端を結ぶと、蒼蝶は立ち膝になっていた足をおろす。

すると思ったよりも俺との距離が近くて驚いたのか、頬が微かに染まる。

その顔を見た瞬間、俺の中で我慢していたものが崩れた気がした。

「あのっ……ごめんなさい」

急いで離れようとする蒼蝶の華奢な肩を掴んだ。

無意識だった。離れるなと頭で考えるよりも先に手が動いていた。

「あの、龍馬さん。手を……」

「もう一つ……」

「え?」

「もう一つ欲しいものがある」

肩を掴んでいた手をうなじの方に移動させる。

何かを感じたのか蒼蝶が身を捩って逃げようとするけど、女の力で男の俺に敵う訳がない。

「あのっ、龍馬さん……?」

蒼蝶の瞳が不安気に揺れる。

でも……ごめん、もうとめられねえ。

うなじに回した手に力を込めると顔が近づく。

反射的に目を閉じると、今まで味わったことのない甘い感触がした。
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