私の師匠は沖田総司です【上】

***

目の前には龍馬さんの顔。

そして唇に当たる柔らかい感触。

……私、龍馬さんにキスされてる。

それがわかるのに、あまり時間は掛からなかった。ゆっくりと触れ合っていた唇が離れる。

「……ごめん」

龍馬さんが謝るけど、私は言葉が出てこなかった。

じわじわと体の奥から優しい温もりが溢れてくる。組長とした時には感じなかった感覚だった。

「っう……う……」

泣いてしまった。これは悲しくて泣いてる訳じゃない。

……嬉しくて泣いてる。

龍馬さんとキスができて嬉しいと思ってるんだ。

私は……龍馬さんのことが好きなんだ。

いつの間にか私は彼のことが好きになっていた。

龍馬さんに会いたいと思ったり、ドキドキしたりするのは全部全部龍馬さんのことが好きだったからなんだ。

……気付きたくなかった。

龍馬さんを好きだって気付きたくなかった。

だって、私はこの気持ちを伝えることができないから。

私は師匠の未来を変える為に来た。龍馬さんを好きになる為じゃない。

「ごめん、いやだったよな」

龍馬さんの指が私の涙を拭う。その顔は悲しそうで胸がぎゅっと掴まれたように痛くなった。
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