私の師匠は沖田総司です【上】
「わぁ……」

思わず感嘆の声が漏れます。

綺麗な建物に、道を歩く綺麗な芸妓の姿を見たら、声が漏れない訳がありません。

あちこちから三味線を弾く音が聞こえてきたり、片手に扇を持ち舞を舞う芸子が見えます。

まるでここは夢世界の様で、地面に足が着いていない様な感じさえします。

「天宮」

斎藤さんに名前を呼ばれると腕を引かれました。どうやら酔った人とぶつからないようにしてれたらしいです。

「酔った奴とぶつかると碌なことにならない。気を付けろ」

「はい」

斎藤さんが歩きはじめます。でも、手首を掴まれたままなのです。

「あの、斎藤さん手……」

「今のアンタは危なっかしい。店に着くまでこのままでいろ」

「了解しました」

斎藤さんに手首を掴まれながら、皆さんの一番後ろを着いて行きます。

掴まれた所から斎藤さんの体温が伝わってきて、無意識に鼓動が早くなっていく。

緊張なのか周りの熱気で暑いからか分かりませんが、掌にじんわりと汗を掻いてきました。

握られている場所が掌じゃなくてよかったと、心底思います。
< 80 / 472 >

この作品をシェア

pagetop