私の師匠は沖田総司です【上】
でも、未来の事など話せる訳もないので

「この前、明里さんのお話を聞いたんです。島原にとても上品な芸妓がいると。そこで明里さんの名前をお聞きしました」

「そうでしたか。確かに彼女は島原で働いているとは思えない程上品な方です。そして気立てが良い。本当に素晴らしい女性です」

明里さんのことを話す山南さんの顔はとても幸せそうで、明里さんへの想いが伝わってきます。

見てて体中がくすぐったくなるような不思議な感じがしますね。

「山南さんは明里さんのことが好きなんですね」

山南さんだけに聞こえるように小声で言うと、山南さんは少しだけ頬を赤らめます。

「どうしてそう思うのですか?」

「明里さんのことを話す、山南さんの顔を見たら分かりました。だってさっき、とても幸せそうに彼女のことを話していましたから」

「そうでしたか。はははっ、まさか、まだ会っても間もない君に、見破られるとは思っていませんでした」

「女は色恋に結構鋭いんですよ」

「そうですか。これは参りましたね」

照れたように頬を掻く山南さん。

その姿を見て思わず、私は少しだけ笑ってしまいました。

「山南さん」

「はい」

「このことは誰にも言いません。だから安心してください」

「天宮君」

「頑張ってください。私はいつでも応援しています」

応援するポーズをすると山南さんが微笑みました。

「ありがとうございます」

「いいえ。さぁ、入りましょうか」

「はい」

私は山南さんと一緒に角屋の暖簾を潜りました。
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