私の師匠は沖田総司です【上】
「ずいぶん遅かったな」

「土方さん」

店の中で土方さんが待っててくれました。その眉間には皺が寄っていて、私に視線が注がれました。

かなりのお怒りモードです。

怒られるかな、と思って身構えていると山南さんが前に出ました。

「遅くなってすみません。私が彼女を引き留めてしまったんです。だから怒らないでください」

山南さんが私を庇ってくれました。

うぅぅ、ありがとうございます。

すると土方さんが溜息を吐きました。

「別に怒ってねえよ。ただ二人がいつまでも来ねえから心配だったんだ。近藤さん達はもう部屋に行ってる。案内するから着いてきてくれ」

土方さんの後ろを着いて行きます。階段を上り、いくつも廊下を曲がり、ある一室に辿り着きました。

「ここだ。ほら入れ、今日の主役」

「えっ?わっ!」

土方さんに部屋に押し込まれました。危うく前に倒れそうになります。

押し込まれたことにより、少しムッとしながら部屋の中を見ました。広い部屋には襖や壁には鮮やかな絵が描かれています。

そしてすでにお酒を飲み始めている方が数名。

「遅かったな、天宮ちゃん!待ちくたびれたぜ!」

「お待たせしてすみません」

「天宮ァ、いつまでも突っ立てねェで俺の隣に来いよ。酌してくれよ酌」

「平助、今夜の主役に酌をさせるな。それと、天宮の隣は俺だ」

斎藤さんが私の手を引いて隣に座らせました。

「モテモテだな、天宮」

原田さんがからかうような口調で言ってきます。

私は苦笑いしか出来ませんでした。
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