私の師匠は沖田総司です【上】
少しだけ落ち込んでいると藤堂さんが私の隣に座りました。

「一君だけずるいでさァ。天宮ァ、俺にも酌してくだせェ」

「はい」

藤堂さんの御猪口にもお酌をしてあげます。

「ありがとうな」

「いえ」

藤堂さんのお酌を済ませると、突然襖が開きました。そこには綺麗な着物を着た二人の芸妓さんでした。

「おばんどす。今日皆はんのお相手をさせて貰います、太夫、千代菊(チヨギク)と」

「天神、明里どす」

明里さんの登場に思わず口がポカーンとなりました。

山南さんも驚いていました。でも、私みたいに口ポカーンとかはしていません。

「近藤さん、太夫と天神を呼ぶなんて奮発したな!」

「まぁ、皆も日頃の隊務を頑張っているからな。その褒美と思ってくれ」

何はともあれ、近藤さんナイスです!

山南さんがとても嬉しそうですよ!

……?

どこからか視線を感じました。

視線がした方を見ると千代菊さんが私を見ていました。

「えらく可愛いお客はんどすなぁ」

「ありがとうございます」

「あぁ、可愛い……(欲しいなぁ、ほんま欲しい……)」

「……」

千代菊さんの言葉の裏から第二の声が聞こえてくる。ゾクゾクと寒気と冷や汗が止まりません。
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