僕の幸せは、星をめぐるように。


隣の台では、2年生がホットケーキを作っているらしく、

しょうゆやみりんの香りに甘いバニラ風の香りがミックスされていく。


ちなみに阿部くんは……。


「あ、おいしいっすね。ちょっと焦げてるのがまた香ばしいっていうか」

「まじー!? 阿部ちゃんからのおいしい頂きましたぁ~!」


その隣の台の女子たちに、アイスがけホットケーキの試食をお願いされていた。


この2年女子、どっかで見たことあるなと思っていたら、

体育大会のときに阿部くんのことを塩顔イケメンってはしゃいでいた先輩たちだった。


軽音の部室でも思ったけど、阿部くんって年上の人と話すときも、

ちゃんと敬語とかはわきまえながらも、自然なコミュニケーションを取っている。


わたしなんか中学まで田舎のせまーい体育会系所属だったし、

先輩は絶対的な存在で、雑談なんかほとんどしない文化だったのになぁ。


むしろ練習中にだべってたらソッコーでにらまれた。

サッカー部やテニス部を眺めていた日には、呼び出し喰らったし。

別に体やボールの動きを見ていただけで、男の子を見ていたわけじゃないのに。


「ちょっと阿部くん! こっち手伝ってけれ~」

「あ、ごめんごめん」


わたしがぼーっと考え事をしていたら、

ユカチンがキリッと阿部くんを連れ戻していた。


そのままユカチンは

「あんた油断してるべ? 隠れファンの存在忘れんでねーよ」

と小麦粉をバットに入れながら、わたしにささやく。


「おめぇ、俺にはさんざんアタックしろだの手ぇつなげだの言っといて、自分はどーなんだべや」

とクニオもからあげを棒に差しながら口を尖らせていた。


あー! 何でここでは2人意気投合してるのさ!

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