僕の幸せは、星をめぐるように。


わたしは目を閉じた。


阿部くんは、たぶん眠ってはいない。

ずっと窓の外を見ながら、無言で時を過ごしている。


彼の心は今、どこにあるのだろう。


閉じたまぶた越しに、雪景色の白い光をかすかに感じた。


再び目を開けた時、彼がもういなくなっているような予感がして、

わたしはずっと目をつぶっていた。


ごうごうと新幹線がスピードに乗って唸る音だけが聞こえてくる。



――星が燃える音ってこんな感じなのだろうか。


みんなの幸(さいわい)のためのために、自分の体をどうかお使いください、

と神に願ったサソリが、ごうごうと赤い火をあげている。



――それとも川の流れる音にも似ているのだろうか。


天の川にそびえ立つ、美しくて大きな十字架。

沈没した船からやって来た青年と少女たちが、讃美歌をBGMにそのなぎさへと向かっていく。



夢なんか見ていないけど、

わたしたちの乗った銀河鉄道は、

星たちをめぐりながら、東北を目指している。



あの物語では、

ジョバンニとカムパネルラは銀河鉄道で、様々な出会いと別れを通じて、

本当の幸せとは何か、2人で考えていく。



そして、

みんなの本当の幸せを探しにどこまでも行こう、

とジョバンニが決意したとき、


カムパネルラは消えてしまったんだ。










< 238 / 317 >

この作品をシェア

pagetop