僕の幸せは、星をめぐるように。

彼は今、何を思っているのだろう。


大宮で乗り換えをした後も、何となくわたしが通路側に座った。


新幹線は東北を目指してスピードを上げる。

窓の外の田んぼは、雪によって覆われていて、北に進むごとにその白は厚みを増していく。


手前ではせわしく、遠くではのんびりと流れる景色を見ながら、

わたしは、はっと突然呼び起された記憶にショックを受け、

座席の背もたれにもたれ、天井を仰いだ。


思い出したのだ。


『銀河鉄道の夜』のラストを。



新幹線はごおっとトンネルの中に突入する。

窓を見ると、真っ黒な背景に、阿部くんの姿がくっきりと映っていた。


彼は窓枠に左のひじをかけ頬杖をつき、イヤホンを耳に入れていた。

視線は窓を向けたまま。


寝不足だって言ってたくせに、ぜんぜん眠ってないじゃん。


わたしは彼がどこにも行かないように、空いている右手を固く握った。


すると、彼は耳からイヤホンを抜き、わたしの方を向いた。


「トシミ、起きてたの?」


「ねえ、せーちゃん」


「ん?」


「ずうっと一緒にいようねえ」


トンネルを抜け、再び真っ白な世界が窓の外に広がった。


気圧が変わり、

耳の奥がからっぽになる感覚がした。


「もちろんだよ」


いつも通りの、淡々としたトーンの優しい声。

それがとても切なくて、悲しかった。
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