そこにいる
テレビ画面の男は、フッと画面から姿を消し、テレビは何事もなかったかのように、また静かになった。

途端・・・


「グッッ・・・・」


と言ったまま、目を見開き口をパクパクさせたのは菜都だった。

苦しそうに胸元を押さえたかと思うと、菜都の口からはおびただしいほどの血液が流れ出た。

僕とシンは、とっさに菜都に駆け寄り、菜都を抱き上げて、必死に呼び掛けた


「菜都っっ!!菜都・・・ど・・どうした・・どうしたんだよ一体・・!!」



菜都の口から溢れ出る血に、菜都は結局、何も言葉を発する事が出来ないまま・・・

苦しみながら逝った・・・・



「菜都ーーーーーーっっっ!!なんで・・なんでなんだ・・・菜都・・・」


顔や服が、血で真っ赤に染まってしまった菜都を抱いて、すでに動かなくなった菜都にずっと語りかけた。


「アレがNGワードだよ・・・」


僕の隣で、シンが静かに答えた。


「NGワードって・・・だって、ソレは・・・」



「『そこにいる』・・・そう思ってたんだろう・・?」



「・・ち・・違ったの・・・?!」



シンはコクリと頷いた。



「『そこにいる』って言って、亡くなった人たちは、皆アイツにハメられたんだ。」


「・・・・・・」


僕の思考は、もう『考える』という作業をやめていた。




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