君の名を呼んで
*
何度目かの城ノ内副社長の部屋。
私が作ったご飯を食べて、副社長は食後の一服。
……一服どころじゃない煙草の本数に、私は彼を横目で見る。
「わざわざお金出して不健康になる人の神経がわかりません」
「馬ぁ鹿。煙草税で日本に貢献してる、高額納税者様だぞ。敬って、へつらいやがれ」
……なんだその理屈。
「なんでも良いですけど本数くらい減らして下さいね」
「心配?」
「副流煙の方が有害なんですよ。私を肺ガンにするつもりですか」
「……お前はそういう女だよな」
フンだ。優しくして欲しいならまず自分の態度を改めて欲しいもんだ。
後片付けをし始めた私を、煙草を消した副社長が引き寄せた。
「そんなの後にしろ」
「城ノ内副社長はなんでそんなに自由人なんです!?せっかちだし」
私の非難に、彼は静かにつぶやく。
「欲しいときに正直になるべきだろ。
いつまでもそこに当たり前にあるとはかぎらねぇんだよ」
その言葉を口にした副社長は、どこか切なそうに見えて、思わずじっと見つめてしまう。
「なに、誘ってんの?」
ふといつもの意地悪な、なのに妖艶な微笑みを向けて、彼が私にキスした。
「っ、ちっがいますよっ……」
「お前は演技がヘタクソなんだよ」
私の抗議なんて気にも留めず、城ノ内副社長は好き勝手に私を翻弄する。
「すみませんねぇ!遠慮が無くて、毒舌で、演技がヘタで、色気なくて!」
彼に振り回されているのをごまかしたくてそう言ったなら、副社長は私をゆっくりソファに押し倒した。
私の思惑なんてお見通しって顔をして、愉しそうに囁く。
「それだけじゃないだろ。頑固だし、実はよく泣くし、思い込み激しいし?」
……でも、悪くない。
なんて。
耳元でキスと一緒に落ちてきた言葉が嬉しくて。
――でも。
こうやってそばにいても、時間を重ねても、やっぱり城ノ内副社長は名前だけは呼ばせてくれない。
理由すらも、教えてくれることはなかった。
本当の意味で、私は彼に受け入れられる日がくるのかな。
いつか、揺れる瞳の真意を聞かせてもらえる日がくるのかな。
愛しさと淋しさを感じながら、私はただ彼に身を任せていた。
何度目かの城ノ内副社長の部屋。
私が作ったご飯を食べて、副社長は食後の一服。
……一服どころじゃない煙草の本数に、私は彼を横目で見る。
「わざわざお金出して不健康になる人の神経がわかりません」
「馬ぁ鹿。煙草税で日本に貢献してる、高額納税者様だぞ。敬って、へつらいやがれ」
……なんだその理屈。
「なんでも良いですけど本数くらい減らして下さいね」
「心配?」
「副流煙の方が有害なんですよ。私を肺ガンにするつもりですか」
「……お前はそういう女だよな」
フンだ。優しくして欲しいならまず自分の態度を改めて欲しいもんだ。
後片付けをし始めた私を、煙草を消した副社長が引き寄せた。
「そんなの後にしろ」
「城ノ内副社長はなんでそんなに自由人なんです!?せっかちだし」
私の非難に、彼は静かにつぶやく。
「欲しいときに正直になるべきだろ。
いつまでもそこに当たり前にあるとはかぎらねぇんだよ」
その言葉を口にした副社長は、どこか切なそうに見えて、思わずじっと見つめてしまう。
「なに、誘ってんの?」
ふといつもの意地悪な、なのに妖艶な微笑みを向けて、彼が私にキスした。
「っ、ちっがいますよっ……」
「お前は演技がヘタクソなんだよ」
私の抗議なんて気にも留めず、城ノ内副社長は好き勝手に私を翻弄する。
「すみませんねぇ!遠慮が無くて、毒舌で、演技がヘタで、色気なくて!」
彼に振り回されているのをごまかしたくてそう言ったなら、副社長は私をゆっくりソファに押し倒した。
私の思惑なんてお見通しって顔をして、愉しそうに囁く。
「それだけじゃないだろ。頑固だし、実はよく泣くし、思い込み激しいし?」
……でも、悪くない。
なんて。
耳元でキスと一緒に落ちてきた言葉が嬉しくて。
――でも。
こうやってそばにいても、時間を重ねても、やっぱり城ノ内副社長は名前だけは呼ばせてくれない。
理由すらも、教えてくれることはなかった。
本当の意味で、私は彼に受け入れられる日がくるのかな。
いつか、揺れる瞳の真意を聞かせてもらえる日がくるのかな。
愛しさと淋しさを感じながら、私はただ彼に身を任せていた。