やさしい手のひら・後編

「俺、明後日ﾊﾟﾘに行くから」

「聞いてないよ」

「だってさっき分かったことだから」

仕事の帰り私のﾏﾝｼｮﾝに来た新くんがｼﾞｬｹｯﾄを脱ぎながら言った

新くんは今、ﾓﾃﾞﾙの仕事を休業し、お父さんの会社の手伝いをしている

仕事のため明後日ﾊﾟﾘへ行くという

「どのくらいあっちにいるの？」

「一週間かな。お前も行く？」

「行きたいけど幼稚園休めないし」

「亜美の生きがいは幼稚園だもんな」

「ひどい・・・」

「お前が楽しんで仕事してるならいいと思うよ」

そう言って頭をﾎﾟﾝと優しく撫でた

がむしゃらになってこの2年間突っ走ってきたからそう思われても仕方がない

でも子供達といると嫌なことも忘れられるんだ

あの太陽みたいな笑顔に私の心は癒された

だから健太のことも忘れられたのかもしれない・・・