夏恋
別れ
「うそ…?!」
裕也は母親の言葉を聞き返していた。
「ホントよ? 彩ちゃんから何も聞いてない?」
明日隣の家の幼なじみが引っ越す…。裕也は前日に初めて知らされたのだ。 驚くのも無理はない。
「彩ちゃんから話しておくってことだから…みんな裕也には今まで黙ってたんだけど…彩ちゃんのお父さんの転勤が決まってね。寂しくなるわね」
裕也は一人取り残されていた様な気がして面白くなかった。
「お風呂入ってくる!」
裕也は勢い良く部屋を出ると、浴室へ直行した。彩ちゃんがいなくなる…幼い頃からずっと一緒で家族ぐるみの付き合いだった。いつも隣には彩ちゃんがいて…冒険をしたり秘密基地を二人で作ったこともある。小さい頃はお互いの家にしょっちゅう泊まったりもしていた。そんな彩ちゃんがいなくなる…裕也は何回も湯船に浸かりながらそんな言葉を心の中で反芻していたが、結局受け入れられないでいた。
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