キスはワインセラーに隠れて


そうしてボトルの3分の2くらいのワインを二人で消費した頃、そういえば冷蔵庫にチーズがあったかも、と今さら思い出して立ち上がったら、床に座ったままの藤原さんに腕をつかまれた。


「……なんですか?」

「どーせお前の家にあるチーズなんてアレだろ。うっすいスライスチーズ」

「あれ、どうしてわかったんですか?」

「匂い」

「……嘘ばっかり」


私は冷たい笑みを浮かべ、そのうっすいスライスチーズを取りに行くため、藤原さんを無視してキッチンの方へ向かおうとしたのに。


「わ、ちょっと……!」


おもむろに立ち上がった彼に無理矢理腕を引かれて、乱暴に倒されたのはベッドの上。

ぎし、と安っぽいスプリングの音がして、藤原さんが私の上に跨った。

その目は妖しく細められていて、完全に私を“獲物”として見てる。


「……チーズよりもっとうまそうなモン、見つけた」

「あ、あの……酔ってます?」

「ああ、そりゃもう気持ちよく。ま、心配するな。理性はコレくらい残ってるから」


コレくらい、と彼が人差し指と親指のすき間で示したのは、ほんの1センチ程度。

そ、それっぽっちの理性、爪でぴんと弾いたら飛んで行きそうじゃないですか!


「……お前、今日は落ちんなよ?」

「お、落ちる……?」

「忘れたなんてことはないよな? ……俺の部屋に泊まったあの日のこと」

「――――っ!」


あのことか……!

それを引き合いに出されてしまうと、私は小さくなるしかない。


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