キスはワインセラーに隠れて


ちなみに今日の料理はさすがに須賀さんが作ったわけではなく、彼が日々育てている他の調理スタッフの渾身のメニューなんだそうだ。

私は仕事中だから食べることはできないけど、見た目だけでもその芸術性は須賀さんの作るものを彷彿とさせて、お皿を運ぶたびに感心していた。


「なによ。繊細な料理は航の方が得意かもしれないけど、お祝いごとにぴったりの華やかな料理は私の方が勝ってるわ」

「華やか……? 豪快の間違いだろ」

「あなたに言われたくないわよ! 男のくせにちまちました作業が好きなんて理解不能」


わぁ……早くも夫婦喧嘩が始まってしまった。

どうやらこの二人は、今のようにお互い言いたいことを言い合うという形で愛が深まる仲なのだと、さっきプロジェクターで映し出された二人のなれそめ映像のナレーションが言っていた。

いいなぁ……本当にお互いを分かり合ってる二人は、喧嘩しててもお似合いだ。


「須賀さん、若葉さん。お幸せに」


私が笑顔でそう口にすると、二人とも喧嘩を止めて、照れくさそうに頷いていた。


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