光のもとでⅡ
 母さんの質問には答えられそうになく、
「ただ訊いてみただけ」
 そのあとは黙々と夕飯を食べ、早々に二階へ上がった。

 ――「用はない、かな? いつもお互いの近況報告みたいな感じだし……」
 翠の言葉を反芻するたび、「近況報告」というものに考えをめぐらす。
「……俺の近況報告って?」
 市場の動向チェックに株価チャート――いや、これは自分の近況報告にはなり得ない。自分の近況報告……。
 とくにこれといって取りざたすものがない。ハナに纏わるものなら書ける気がしなくはないが……。
 俺はパソコンの電源を入れ、メモ帳を起動させた。
 思いつくままにハナのプロフィールから性格、嗜好、行動パターンを書き出していく。季節は春と秋が好きで、夏の暑さと冬の寒さが大の苦手であること。ヒエラルキーの頂点には母さんがいること。一日の大半を寝て過ごし、父さんの書斎がお気に入りであること。
 あれこれ書き足していくと、それなりの分量になった。それらを簡潔にまとめ見やすくする。
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